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7.92021
被リンクについて(1)
前回の続きになります。
被リンクについてのお話です。
今から15年ぐらい前ですかね、SEO対策とは被リンクがすべての時代がありました。検索の順位を上げたければSEO対策会社に申し込んでSEO対策会社が持っている多数のWEBサイトから被リンクを貼ってもらうだけで検索の順位を上がりました。ただ、さすがにこれは問題がありました。
検索エンジンを利用する人の目的は言うまでもなく、中身の濃い正しい情報が欲しいのですが表示されるのは中身の殆どないアフィリエイト目的のスカスカのサイトばかり。グーグル検索の1ページ目に掲載さている情報より、2ページ目以降の沈んでしまっているWEBサイトの方が実は中身が濃いということが頻繁に起きました。早い話、金で検索の順位が買えたわけです。悪貨は良貨を駆逐する、まさにグレシャムの法則のそれ。
前回も書きましたがグーグルの主な収入源は広告です。広告とはグーグル検索するとページ上部と下部に表示されるあの広告です。正確にはアドワーズ広告といいます。あのアドワーズ広告に出稿する人の目的はグーグル検索をしたときに上部に表示されることによって自社のサイトがクリックされ、その自社サイトに訪れた人が商品を購入したり、サービスの予約をしてくれるのを目的としています。当然、検索を利用する人がたくさん存在するというのが大前提です。
しかし、中身の薄いWEBサイトばかりが表示されるようではグーグル検索を使う意味がありません。グーグル検索を利用する人が減れば広告主からすると広告を出稿する意味がなくなってしまいます。詳しいことは省きますがあのアドワーズ広告というのは月々の料金を支払って掲載するバナー広告など違い、広告を掲載するだけでは料金が掛かりません。無料です。料金が発生するのは興味を持ったユーザーがポチッとワンクリックしたときです。ちなみにそのワンクリックの値段ですが、オークション形式で値段が決まります。広告を掲載する側からすれば当然一番目立つ一番上に掲載したいはずです。そこでワンクリック10円とまずは設定します。ライバル会社がワンクリック10円で設定するならウチはワンクリック20円だと金額を乗せます。するとライバル企業より上に掲載されます。
本当はこういう単純な仕組みではなく、ほかにも様々な要因が絡み合ってワンクリックいくらの単価が決まるのですが、まあだいたいこういうことです。
つまり、掲載したい人が多くいればいるほどワンクリックの単価が上がっていきますが、極端な話、グーグル検索を誰も利用しないのであればワンクリック1円の最低単価であっても載せようとは思わないでしょう。
だからこそ、検索エンジンを利用する人が増えてくれなければグーグルは困るのです。
では、何故、被リンクをたくさん貼りまくれば検索上位に表示されてしまったか。
15年前だと、やっとインターネット検索が一般にも浸透してきた時期です。うろ覚えですがまだ、ググるという言葉すらなかったかと思います。
一般的に日本語というのは難しい言語だと言われています。文字もひらがな、カタカナ、漢字があります。
また、例えば英語では自分を表す単語のI、英語圏ではこれだけで事足りてしまいますが、日本語は私、俺、僕、わし、わて、ウチ、おいどん、拙者、それがしなどと多岐に渡り、その単なる一人称の私にしても、「わたし」と「私」では微妙なニュアンスが違ってきます。なんとなくですが、「私」は形式ばった文字の書き方になりますが、特に若い方のブログやポップミュージックの歌詞は「わたし」の方がしっくりくる気がします。ですが、このしっくりくるというのも日本語圏以外の人からするとよく分からない表現だと思います。日本語にはとにかくこういうことが多すぎます。これだけではなく、極めて抽象的な言い回しもあります。皇族に敬称をつけるときは「さま」ですが、一般人の場合、「様」、これも実はよく分かりません。一応、昭和29年に「皇室関係放送用語集」というものが報道関係者の間でまとめられ、皇族の敬称を漢字ではなくひらがなの「さま」とすることを決めたらしいすが、実は「皇室関係放送用語集」でも何故敬称を「さま」に統一するのかということは明文化されておりません。様だと格式ばり過ぎてしまい、「開かれた皇室」を目指すという趣旨から親しみやすいひらがなの「さま」に決められたということらしいですが、絶対的にそうだと決められているわけではなく、皇族に「様」をつけたとしても必ずしも間違いではないということです。
何が言いたいのかというと、これだけ日本語というのは難しい言語だということです。
15年前のグーグルのスーパーコンピューター、そこまで賢くはなかった。たぶんですが、「わたし」と「私」との絶妙な違いなど分からなかったはず。だからグーグルは被リンクに頼りました。どういうことかというと、たくさんの被リンクがついているということはそれだけ多くの人が支持しているサイトであるからいいサイトだという論法。
確かに、例えば東京大学と地方のあまり偏差値の高くない大学、どちらの方が被リンクを多く獲得できているかといえば東京大学の方だと思います。しかも東京大学であると、政府関係機関や研究機関、著名な研究者からのリンクが多いはず。なかにはノーベル賞受賞者の博士からの被リンクもあると思います。他方、地方のFラン大学、有名な研究者がわざわざ取り上げるかといえば取り上げはしないでしょう。そもそもそういう私立大学があることすら知らないかもしれません。
これをグーグルがどう判断するかということです。
グーグルは東京大学と地方のFラン大学についてあまりよく分からない。ただ、東京大学の方が国の機関であったり、有名な研究者からのリンクが多い、だから、東京大学の方が有名な大学なのだと判断する。
もちろん、あくまでも一つのたとえです。実際はこんな単純な話ではないですが、当時はそういうことが至る所で起きていましたというたとえです。これをあざとく利用したのがSEO対策会社。ページランクの高い中古ドメインを買い漁り、そこから検索の順位を上げたい企業や店舗のWEBサイトへのリンクを貼りまくった。実際これですぐに検索の順位が上がりました。
その結果なにが起きたかというと、内容の薄いサイトであっても被リンクの数が多いといとも簡単に検索の順位が上がってしまうという、裏技的な手法が通用してしまったのです。今では想像もつきませんが例えば子供の家庭教師の先生を探すためにグーグル検索を利用するとSEO対策をしたアダルトDVD会社のサイトが検索に上がり、「家庭教師とぼく」などというアダルトDVDが検索に出てしまう始末、メガネを掛けたスーツ姿のなまめかしい女の人がムチを持って微笑んでいたりする、子供の家庭教師どころの騒ぎじゃありません(笑)。
笑い話のように聞こえるかもしれませんが15年ぐらい前だと割りとふつうにあった出来事です。私も行ったことのない観光地を調べていると風俗店や出会い系サイトばかりがヒットしてうんざりした記憶があります。
それもこれもグーグルが被リンクに頼り切った結果です。
さすがにこれじゃいけないとグーグルも検索エンジンの指標の出し方を見直して今のような形になったのですが、では、現在被リンクがまったく無効になったのかといえば決してそんなことはありません。やはり内容の濃いサイトというのは他のWEBサイトやツイッター、Facebook、インスタグラム、アメブロなどのブログなどから被リンクがあるのが当然です。
ただ、自然に被リンクって増えるものだと思います。
芸能人がなにかヤフーニュースに掲載されれば当然ツイッターや個人のブログでも話題になり、そのヤフーニュースの該当のページであったり、芸能人のツイッターやブログに向けての被リンクが貼られる。こうして被リンクが増えていくのが正しいというか健全な姿だと思います。
とはいえ、地方の中小企業や店舗がそこまで誰かに注目されて被リンクが増えていくということはあまりないと思います。仲間内でこういうサービスが始まったよと告知し合うのが関の山で、あとはせいぜい商工会などの兼ね合いで記事として取り上げられるというぐらいだと思います。
じゃあ、こういった地方の中小企業のホームページがまったく評価されないかといえばそんなことはありません。
かなり長くなったので次回に続きます。